公立中高一貫校適性検査


公立の中高一貫校に興味を持った時、一番頭を悩ませるのが「適性検査って何?」「どういう対策をすればいいの?」という疑問です。

ここでは公立中高一貫校とは何か、適性検査とは何か、佐賀県の中高一貫校はどうなっているのか、研青館として適性検査へどう向き合っているのか、どのような対策授業をしているのか、をご紹介したいと思います。

公立中高一貫校とは?

文部科学省の「中高一貫教育Q&A」には公立中高一貫教育導入の趣旨について、

 

「心身の成長や変化の著しい多感な時期にある中等教育において,一人一人の能力・適性に応じた教育を進めるため,中学校教育と高等学校教育を6年間一貫して行うことについて…(中略)…大きな幾つかの利点を持つ中高一貫教育を享受する機会を,子どもたちにより広く提供する」

「一方で,中高一貫ではない中学校・高等学校の利点や意義も確認し,その上で,子どもたちや保護者の選択の幅を広げる観点,さらには,地方公共団体や学校法人などの学校設置者が自らの創意工夫によって特色ある教育を展開する観点」から中高一貫教育を導入した、とあります。

 

中高一貫教育制度は,生徒の個性や創造性を伸ばすことを目的として設けられています。そのため,中高の接続を前提とした特色あるカリキュラムを編成することができるよう,学習指導要領の範囲を越えた指導ができるような特例(高校の指導内容を中学校に移行する等)が設けられています。

 

注意したいのは、従来の中高一貫ではない中学校・高等学校とは別のルートを創設したわけですから、個々の中高一貫校にはそれぞれ独自の教育目的とそれに基づくカリキュラムがあるということです。そして子や保護者に幅広い選択肢を与えたうえで、従来の中高ルートとは違う、中高一貫ルートを選択した親子には、学校側は「なぜこちらのルートを選択したのか」という興味を持っているはずです。

 

志望する学校の設立目的や教育方針、カリキュラムをきちんと理解し、納得し、それを将来自分の希望する道に引き寄せて考えることは、面接試験で定番の、「なぜこの学校を志望したのですか」に対する明確な答えを生むはずです。

中高一貫校イメージ

適性検査とは?

文部科学省の「中高一貫教育Q&A」のページに、以下のような記載があります。

 

 「中高一貫教育の選択的導入の趣旨は,現行の中学校・高等学校に加えて6年間の一貫した教育課程や学習環境の下で学ぶ機会を選択できるようすることにより,中等教育の多様化を一層進めようとするものです。したがって,中高一貫教育校が受験準備に偏した教育を行う,いわゆる「受験エリート校」になったり,受験競争の低年齢化が生じたりするようなことは,教育改革に逆行するものであり,あってはならないことです。中高一貫教育校の設置と運営に際しては,これらの点に十分に留意がなされる必要があります。
 特に,公立の中等教育学校及び併設型中学校では,学校教育法施行規則により,入学者の決定に当たって,学力検査を行わないこととしています。」

 

(佐賀県の香楠中学校、致遠館中学校、唐津東中学校、武雄青陵中学校のいずれも上記の「併設型中学校」に該当します。)

 

小学校で学ぶ知識を直接的に問うような、学力を測る試験ではなく、自治体ごとあるいは各公立学校ごとに、読解力や思考力・表現力などが求められる適性検査を実施し、それを入学者選抜の一つの材料としているわけです。多くの私立の中高一貫校が実施している国語・算数などの科目試験とはかなり様相が異なります。

 

各自治体や学校が、小学校で習得する知識内容の範囲内ではあるものの、独自に検査問題を作成し実施しているので、その種類や傾向の幅は広く、適性検査とひとことに言っても、全国にさまざまな種類の適性検査があると言えます。検査主体ごとの独自性が強く出る、その意味では非常にクローズドな(閉じられた)検査と言えるでしょう。

 

まずは興味を持たれた学校の過去の適性検査問題を入手されるのが、適性検査を知る唯一かつ一番の方法でしょう。→定番の赤本など

(「〇〇中学校合格レベル問題集」など、特定の中学校名で様々な学校の問題集を販売している会社のものは、研青館ではお勧めしていません。)

また、市販の適性検査対策問題集などは全国的に販売されているため、自分が受けようとしている学校の適性検査とは傾向が異なる問題集になってしまうことがあります。この点もご注意ください。

佐賀県の公立中高一貫校と適性検査はどうなっていますか?

佐賀県には公立の中高一貫校として、

県立香楠中学校(鳥栖市)

県立致遠館中学校(佐賀市)

県立唐津東中学校(唐津市)

県立武雄青陵中学校(武雄市)

の4校があります。

 

令和7年度佐賀県立中学校入学者募集要項概要によると、各中学校の配点は次のようになっています。

配点は年度によって異なることがあります。最新の情報をご確認ください。

 

佐賀県 公立 中高一貫校 配点

 

適性検査Ⅰについては、「生活の中で起こるいろいろなできごとについて、自分ならどうするかを考え、それを人に分かりやすく伝える能力を総合的にみる。」

 

適性検査Ⅱについては、「身の回りのいろいろなことがらに対して、興味や関心をもち、自分自身で問題を発見し、すじ道を立てて考え解決しようとする態度や能力などを総合的にみる。」

 

という趣旨で行われています。

過去の検査問題を見ても、おおまかにですが「適性検査Ⅰは国語・社会の文系分野、適性検査Ⅱは算数・理科の理系分野の問題」ということができると思います。

 

調査書に関しては令和7年度の調査書様式が公表されています。(クリックして拡大できます)

佐賀 県立中 公立中高一貫 調査書 オモテ
佐賀 県立中 公立中高一貫 調査書 ウラ

これは在籍する小学校長が作成するものです。4年生からの評定が記載されます。

要は適性検査の結果だけでなく、学校の成績や普段からの態度や活動も点数評価として選抜に使用されるということです。

 

面接はどの中学校も1グループ5人程度の集団面接となっています。

多くの子どもたちにとって人生初の面接となるのではないでしょうか。

所作や身だしなみ、受け答えの仕方、想定される質問への答えなど、事前に準備すべきものを準備して、練習しておく必要があります。

適性検査に必要な力は?

適性検査に必要な力は、大きく分けて

  1. 問題文(会話文や資料)の内容を理解する力→問題文理解力
  2. 設問(問われていること)を理解する力→設問理解力
  3. 日本語として適切な(正しい)文章を書く力→文章力
  4. 思考力・説明力を基にした、問に答える適切な解答を書く力→解答力

の4つがあると研青館は考えます。

 

前の2つは外部情報を頭の中に取り込み整理する「受け」の処理、後の2つは頭の中で考えたことを外部に表現し記述する「出し」の処理ということができるでしょう。

 

下の問題は、2021年度佐賀県公立中学校適性検査の一部です。(批評のため一部引用)

佐賀県 公立中高一貫校 適性検査

ひろとさんとお母さんの会話文とそれに付随する資料を読み取る問題です。

 

この問題では何についての会話か、どういう資料か、問題文を理解するのはそう難しくはないでしょう(問題文理解力)。

 

設問を理解することについては少し注意が必要かもしれません(設問理解力)。

この場合、資料から「お母さんの意見に賛成する理由」を読み取らなければいけません。

(「資料をどう評価するか」も重要なテーマですが、ここでは置いておきます。)

問題文から「お母さんの意見」を探し出し、それに沿うように資料を2つ選択し、評価しなければなりません。

資料を見て、漠然と、あるいは自分が感じた評価を問うているのではありません。

 

今は例として簡単な問題を取り上げましたので「そんな簡単なことをと大仰に」と思われるかもしれません。

しかし、思考力・説明力にもかかわってくる『ある一定の立場に立って資料を分析評価する』『同じ資料でも見方が違えば違う評価ができる』という視点は、後から述べる『問題を抽象化して考える』という研青館の指導テーマの重要な一つです。

何をどのように学べばよいですか?(研青館の指導)

次の問題は平成26年度佐賀県立中学校適性検査の一部です。(批評のため一部引用)

佐賀県 公立中高一貫校 適性検査

 

いかがでしょうか。どのように答えるべきでしょうか。

「はばが広くなっている」では不十分でしょう。

「乗り降りがしやすいように、はばが広くなっている」なら良いでしょう。

「乗り降りがしやすいように、他の駐車場よりもはばが広くなっている」ならなお良いでしょう。

 

ではこれをどのように指導するべきでしょうか。

実はこの問題は、適性検査においては「典型問題」といえます。

これが本番の検査会場で、「典型問題だな」と気づける子と気づけない子の差はかなり大きいものがあるでしょう。

気づけるようになるためには、適切な指導力を持った講師による適切な指導が必要です。

 

研青館ではこの問題は次のように考えます。

 

つまり「乗り降りがしやすいように、はばが広くなっている」で終わりではありません。

そのような「この問題だけの世界」で終始してはいけないのです。

 

問題を俯瞰的に見て抽象化するところまで考えます。

この世の中にあるおよそすべての「物」は、ある特定の「目的」をもって作られているはずです。

その目的を達成するために、その物にはある「特徴」があります。

物をよく観察し、見つけた特徴からそれが作られた目的を考えるという、問題を抽象化した取り組みが必要なのです。

伊万里 塾 研青館 公立中高一貫 適性検査 問題への考え方

あるいは逆に、ある特定の目的を達成するためには、その物がどのような特徴を備えていればよいかを考えるという姿勢も必要です。

例えばこの問題で言えば、「体の不自由な人が利用しやすい」という目的のため、駐車場という物はどうあるべきか、という問題ではどうでしょうか?

逆の思考の訓練のため、研青館の授業でもこのような問いをよく生徒に投げかけます。上の図の特徴の欄にはどんなことが書けるでしょうか?

 

・地面に色が塗ってあって、場所がわかりやすくなっている。

・建物の出入り口の近くに駐車場がある。

など考えられるものはいくつもあると思います。

 

 

このような逆の問い方をする問題も頻出です。(例えば平成30年度大問2-⑵「年齢や障がいにかかわらず誰もが利用できるカフェにするためどのような改装をすればよいか」)

 

小学生は「抽象化して物事を考える」という知的活動が高度に発達する時期だと言われています。

「はばが広くなっている駐車場」という平面的な思考世界でうろうろするのではなく、立体的な抽象化を行うよう仕向ける授業が大切であると研青館は考えています。

 

以上、適性検査という広い範囲を扱う問題のごく一部、それに対する研青館の考え方のごく一部をご紹介いたしました。

皆様の参考になれば幸いです。